参加者の方からのエッセイ
江郷功起氏

今回、Manual Therapy International Tokyo(MTI)の講習会「BASIC LOW BACK PAIN EVALUATION」に参加した一個人としての感想を書きたいと思います。

MTIは海外の優れた知識・技術を日本国内に紹介し、Manual Therapyの質的向上をはかるものだと思っております。この講習会の一番のメリットは、海外の第一線で活躍する理学療法士から講習を受けることができることです。その上、受講料は割安な料金設定となっています。今回来日されたRosaline M Velasco氏はアメリカでも70名ほどしかいないManual Therapyの専門理学療法士です。大変有能なことが伺えます。Verasco氏は数多くのManual Therapy Techniqueの講習会に参加されており、その内容をミックスした講演でした。一つの治療技術に凝り固まるのではなく、広い視野でたくさんの意見を吸収しようと言っておられました。講義内容としては大変熱心な講師で、資料も豊富でした。一端を紹介するとTechnique manualが61ページ、評価表が6ページ、筋力増強方法が11ページ、生活指導が6ページありました。これに加えて、評価の実技実習と問題点の解釈の仕方、治療順序とポイントに時間をさいて講習が進められました。受講生の多くも時間が経過するものも忘れ、休憩時間もそこそこに練習していました。

今回の講習会で驚いたことの一つが、評価にとっても時間を費やすことです。Verasco氏は、通常1時間くらいは評価していると言われていました。評価実習項目だけでも視診、ROM(actuive,passive,resisitixeと3種類)、Palpation、Neurology test(デルマトーム、マイオトーム、深部腱反射の3種類)、special test(SLR、Slump Test、 Femoral nerve Test、Cramユs Test、 Oberユs Test、Bicycle Testの6種類)、Joint Mobilization(Passive Accessory、Passive Physiologicalの2種類)と数多くの評価を行い、その中から症例の問題点を探求していくとのことでした。詳細な評価は、詳細なPTプログラム立案へつながることは容易に想像できます。細かなアプローチは治療バリエーションが増えることになりました。治療方法は腰椎の屈曲に対するアプローチ、側屈に対するアプローチ、回旋に対するアプローチは当然ながら異なります。またプーリーを利用した筋力増強練習では、負荷の決め方、抵抗の方法にも理論と理由がはっきりと説明できる点は感心しました。単に10回何セットではなく、どのくらいの負荷で何回できるので、筋力あるいは持久力を増強する為にはどの負荷で何回と決めていきます。評価・治療実習では2人1組で行い、時間の許す限りVerasco氏はベッドを回りながら細かな指導とアドバイスをしておられました。

外国人講師から学ぶもう一つの利点は、その国の事情が直接尋ねられることです。PT数や医療の動向、診療点数、1日の患者数、講習会以外の内容、経験談などが直接聞けてとても新鮮でした。いつか行って直接見てみたいと思う内容でした。

今回は企業からのスポンサーもあって、バングラデシュから若き理学療法士を迎えることができました。Arefinさんといって、数十名しか理学療法士が誕生していない中の一人で、いわばパイオニアです。このArefinさんを福岡空港へ迎えに行き、かたことの英語でコミュニケーションをとりつつ、北九州の講習会会場へむかいました。海外へ出ていくことだけが国際交流となるのではなく、ホストとして日本へ迎え入れることも国際交流だなと感じるひとときでした。海外のPTを受け入れることで他国の事情、医療システム、疾病層など知ることができました。Arefinさんは大変勉強熱心な方で日本にも興味が示しており、日本についてたくさん質問していました。日本の文化はもとより、PT数、PT教育システム、卒後システムなどなどをきいていました。また講義でも熱心に発言しており、彼の熱意に引っ張られた所もありました。海外の人と出会うことは、海外のことを知ることにもなりますが、日本を見直す、自分の足元を確認することにもなります。自分自身の考え方、取り巻く環境、社会保障システム、国の制度などなど改めて考えると気付いていなかったこともでてきます。

最後になりますが、主催者の小倉さんが日本とアメリカを往復している関係で、知り合いの優れた理学療法士を招待することが出来、安価な料金設定が可能と伺っています。今後も国際交流をしながら個人のPTの質、PT団体の質を高めて社会へ貢献していきたいと思っております。

乱文ながらリハ室にて
大牟田市立総合病院 江郷功起




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